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75. お遍路日記]]V
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すべての札所に「本尊」があり、その本尊にそれぞれの「真言」がある。お四国八十八ヶ所のうち最も多い本尊は薬師如来で、二十三ヶ寺が薬師如来を本尊としている。その真言は『おん ころころ せんだり まとうぎ そわか』である。古代インドのサンスクリットの発音が唐をへて日本に渡ってきたのであるが、実際は意味不明らしい。私も含めて多くの遍路たちが全ての本尊や大師堂の前で唱える「光明真言」は『おんあぼきゃべいろしゃのう まかぼだらまにはんどまじんばら はらばりたやうん』で、この真言は一切の仏や菩薩の総呪とされ、その功徳は無量無辺だとされている。
第六十五番『由霊山三角寺(ゆれいざんさんかくじ)』は《菩提の道場》愛媛県最後の札所である。本尊は「十一面観音」でその真言は『おんまか きゃろにきゃ そわか』である。急な石段を登っていくと山門があり、その山門が鐘楼になっている。私はどこかの札所で教えられたとおり参拝前に鐘を撞き、手を合わせた。本堂にお参りし、やや高台にある大師堂まで足を運び、般若心経と光明真言を唱える。晩秋の四国の山並みには、それでも紅葉の残りをところどころにうかがうことができた。
一気に《涅槃の道場》讃岐の国・香川県に入る。第六十六番『巨鼇山雲辺寺(きょごうざんうんぺんじ)』は呼んで字のごとく雲の中に在る。ご本尊は千手観音。雲辺寺へはロープウェイで登る。標高千メートルまで七分間の空中旅である。山頂の駅から本堂までは少々歩く。境内は広く、本堂のほかに大師堂、護摩堂、書院、鐘楼堂などが建っており、鎌倉時代は「四国高野」と呼ばれ四国各地から学問僧が集まり、七堂伽藍と十二坊を備え、末寺も八ヶ寺を有したそうでかつての繁栄が偲ばれる。
第六十七番『小松尾山大興寺(こまつおざんだいこうじ)』までは十キロ足らずである。ご本尊は薬師如来。大興寺は地元では『小松尾寺』と呼ばれ親しまれており、横峰寺や雲辺寺のような険しい修行場と違ってのどかな田園風景の中にある。ここ大興寺の境内には四国霊場の中で唯一大師堂と天台師堂が建っており、いわゆる空海と最澄、真言宗と天台宗が同居している札所である。お四国八十八ヶ所霊場の懐の深さがうかがえる。
納め札を納め、お経を唱え、納経帳に朱印を頂き、本日の宿泊予定である大丸旅館に向かった。その夜のお味噌汁が異常に美味しかったことを今でも覚えている。天気予報によると明日は雨模様である。快い疲れの中いつしか眠りに陥っていた。



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