或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

香山草紙 エッセイ集


  80. お遍路日記XXⅦ

昨夜旅館で手配をしてもらっていたタクシーに乗り、朝七時前に「城山温泉」を後にした。今日は一日タクシーを貸し切る段取りなので、その料金を交渉する。 第八十番『白牛山国分寺(はくぎゅうざんこくぶんじ)』までは十五分足らずである。全国の国分寺同様この讃岐国分寺も、聖武天皇の勅命によって建立された ものであり、行基が「十一面千手観音」を安置し開祖したと伝えられている。仁王門をくぐると境内は広々としており、その両脇には松並木が続き、さらに進む と右手に鐘楼堂がある。そこにある鐘は四国最古とされており、鐘にまつわる大蛇の伝説も残っている。早朝にふさわしい札所で、清々しい天平の面影を残した 古刹である。
第八十一番『綾松山白峯寺(りょうしょうざんしろみねじ)』は、崇徳上皇のエピソードが数多く残っている札所である。実父である後鳥羽天皇には愛されず、 実弟の後白河天皇によって讃岐の地に流され、悲運のうちに崩御された崇徳上皇の遺体は、この白峯寺に運ばれ荼毘にふされ、現在も御陵として残っている。白 峯寺のご本尊は四国唯一の「千手千眼観自在菩薩」で、その真言は『おん ばざら たらま きりく』。白峯山の中腹に位置し、今もしっとりとした佇まいが 残っている札所である。
第八十二番『青峰山根香寺(あおみねざんねごろじ)』は、智証大師が千手観音を刻みご本尊としたのであるが、その木が香木で根っこの部分がとてもよい香り がしたところから『根香寺』と名づけられたそうである。本堂は回廊式になっており、その回廊には33,333体の観世音小像がびっしり並び、庭園には葉が 五色に染め分けられたように色づくという「五色もみじ」の木もある。
第八十三番『神亳山一宮寺(しんごうざんいちぐうじ)』の仁王門には大草履が奉納されており、そのほかにも千羽鶴や涎掛けなどもあり、地元の人から慕われ ている様子がうかがえる。本堂の前には地獄に通じるという穴があり、ここから地獄の釜の音が聞こえるそうである。罪深い人間は頭が抜けなくなるとのこと で、私は遠慮をした。
第八十四番『南面山千光院屋島寺(なんめんざんせんこういんやしまじ)』は源平合戦の歴史の中にある。平家最後の戦いの舞台になった壇ノ浦の古戦場も眼下 に一望できる。あの唐の名僧・鑑真和上が開祖した札所としても有名である。私は源平の戦で命を落とした多くの人たちの霊を供養するという気持ちも込めて、 般若心経を唱えた。