或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

香山草紙 エッセイ集


  71. お遍路日記ⅩⅩⅡ

第五十九番『金光山国分寺(こんこうざんこくぶんじ)』までは僅か5~6キロの道程である。国分寺はそれぞれの国に一つずつあり、伊予の国分寺は唐子山 (からこやま)の山麓にある古刹である。741年に聖武天皇の詔勅により建立され、開基は行基であると伝えられている。寺の歴史は興廃の歴史でもあり、こ の札所も例外でなく四度の火災に見舞われており、その都度復興し今日に至っている。
タクシーの運転手の勧めで、先に六十一番から六十四番を打って、難所の一つである第六十番『石鉄山横峰寺(いしづちさんよこみねじ)』へ向かうことにした。
第六十一番『栴檀山香園寺(せんだんざんこうおんじ)』は鉄筋コンクリート造りのモダンな札所である。建物は近代的だがその歴史は古く、585年頃に聖徳 太子が創建したと伝えられている。本堂はまるで大聖堂のようであり、大師堂もその中にある。御本堂は大日如来であるが、大聖堂の右手奥にある子安大師堂の 方がよく知られており、安産、子育ての札所として人気を集め、広く海外からも信仰を得、その信徒は四十万人を超えると言われている。
第六十二番『天養山宝寿寺(てんようざんほうじゅじ)』の御本尊は十一面観音であり、弘法大師が光明皇后をイメージして刻んだと伝えられる。よく手入れの 行き届いた庭園の一角に子安観音が立っており、ここも安産の守り神として広く親しまれている。第六十三番『密教山吉祥寺(みっきょうざんきちじょうじ)』 は住宅街の中にあり、お四国で唯一毘沙門天を本尊としている札所である。境内には「成就石」や「マリア観音像」もあり、本堂も大師堂も素朴で親しみを覚え る。明治以前は石鎚山の別当寺だった第六十四番『石鉄山前神寺(いしづちさんまえかみじ)』は役行者小角が開基したと伝えられる。御本尊は阿弥陀如来で、 老木に囲まれた境内はあくまで静かである。皇室との縁も深いこの札所には沢山の古い灯籠が何基も立ち並んでいる。
いよいよお四国霊場の難所の一つである第六十番『石鉄山横峰寺』である。横峰寺は西日本最高峰石鎚山(1983m)の中腹標高750mにあり、四国霊場三 番目の高さだと言われている。険しい遍路道、杉の老木に覆われた境内、澄み切った空気、張り詰めた緊張感が私を神秘の世界へ引き込む。お線香を焚き、ろう そくを灯し、一心不乱に般若心経を唱えた。
役行者小角が開基し宇宙の守り神大日如来を御本尊に持つ横峰寺は、まさしく修行の霊場にふさわしい名刹である。