或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

香山草紙 エッセイ集


  69. お遍路日記ⅩⅩⅠ

2000年4月のお遍路の旅は結局五十三番札所で、精も根も尽き果て終わったのであるが、そのとき私はどうしても20世紀中に成就したいという願いが強く あり、密かに11月頃を予定した。前回の教訓を生かし、今回は電車とバスとタクシーを移動手段に選んだ。その甲斐あって、体力的な面においては何一つ負担 に思うことなく全行程を終えることが出来たのである。
第五十四番『近見山延命寺(ちかみざんえんめいじ)』は静かな山すそにあり、行基が不動明王を刻み本尊とし開祖したと伝えられる。久しぶりに唱える般若心 経と光明真言が静かな境内に心地よく響き渡る。「さあまた始まる」という身の引き締まる思いを改めて感じた。
街中にある第五十五番『別宮山南光坊(べっくさんなんこうぼう)』を過ぎ第五十六番札所『金輪山泰山寺(きんりんざんたいさんじ)』までは数分の距離であ る。泰山寺は本堂も太師堂もこぢんまりとしており、本尊は地蔵菩薩で開祖は弘法大師である。毎年地元の川が梅雨時期に氾濫して困り果てていたのを弘法大師 が指導し、堤防を築かせ氾濫を収めたそうであるが、それを記念して植えられた松の木が『不忘松』としてあったが近年枯渇したそうである。もったいないと思 うのは私だけであろうか。
第五十七番『府頭山栄福寺(ふとうざんえいふくじ)』は山の中腹にあり、海陸安全の祈願所としても信仰を集めている。本堂横の回廊には木製の車や松葉杖が 奉納されており、巡礼者の一人がこの札所まで来たところ、突然歩けるようになったというエピソードから、その霊験に感謝し納めたものらしい。また境内の片 隅には上品な顔立ちの可愛い地蔵尊が立っている。第五十八番『作礼山仙遊寺(されいざんせんゆうじ)』はロマンの薫り高い伝説のお寺である。天智天皇の勅 願により開祖され、御本尊は天智天皇の守護仏千手観音である。山の頂にある仙遊寺は眺望も素晴らしく、まるで空と海が同居しているようで、呼んで字の如し 仙人が時々遊びに降りてきそうである。
〈焼山寺登れば桜満開なり〉〈花を踏みお山に響く鈴の音〉これは4月にお遍路に出た最初の日に十二番札所焼山寺で詠んだ拙句である。今は11月。紅葉の 中、再びお遍路の旅に出発させていただいた。八十八番『大窪寺(おおくぼじ)』をめざして・・・