或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

香山草紙 エッセイ集


  47. お写経II

『お写経』についてもう少しだけ。
2000年にお四国八十八ヶ所お遍路の旅に出て、様々な出来事や予想もしなかった精神的ストレスに驚きを覚えながら、春に53番まで、秋に残り35番を済 ませた私は、少なからず心の空洞を感じ始めていた。己の未熟さを少しでも補う為に、その空洞を埋める為に、とお遍路を終え2年経過した昨年からお写経を始 めた。目標をとりあえず1,000枚とし、5年でそれを達成する計画を立て、今その進行中である。
"観自在菩薩行深般若波羅蜜多…………"で始まる266文字の『摩訶般若波羅蜜多心経』はまさしく小宇宙の世界である。
般若心経のお教えは一言で言うならば"とらわれない心""かたよらない心""こだわらない心"、すなわち『空』という誠に簡単明瞭な教えである。
しかしながら、それをいざ自分自身に置き換えてみると果たしてどうであろう。特に私などは"とらわれてばっかり""かたよりの固まり""こだわりっぱな し"である。しかし、最近は「それでもいいじゃないか」と半ば居直っており、せめて朝目が覚めてどれだけ長く『空』の心で過ごせるか、「今日は1時間その 気持ちで過ごせた、明日は1時間10分でいい、空の心でいよう」と思い始めた。そう思い始めることにより非常に楽になり、目の前が明るくなった。
今年は6万年ぶりに火星が地球に接近した年だった。私も何度か東南の空を見上げ、特に8月末日頃には大きく燃えるような火星を見ることが出来た。9月初日 には肉眼で見ても月と重なり合っているように見え、まるで月と火星がランデブー(少々古臭い言い回しであるが)をしているようだった。それから日が経過す るにつれ、だんだん小さくなり我々の視界から消えていった。今度地球に近づくのは西暦2287年頃だそうである。もちろん私はこの世にはいない。しかし宇 宙は存在する。そして般若心経の教えもまたこの地球のどこかに語り継がれていることだろう。
宇宙は150億年前にビックバンによって創世されたと言われている。それに比べ、我々の人生など針の穴ほどもない。つまらない偏見で他人を判断するのをや めよう、妙な差別をなくそう、民族紛争がこの地球上でなくなってほしい、もう宗教戦争はやめよう、宗教は本来人間を救うものではないか、と願っている日々 である。
私は自分が下手な文字で書いた『お写経』を時々人にもらってもらうことがある。最近腹部大動脈瘤の大手術をした友人におくった。「気合のこもった般若心 経」という表現でお礼を言われた。手術の前日にも関わらず額に入れたそうである。大いに恥ずかしい限りである。娘が夏休みにウィーンから帰省したので日本 を離れる時に持たせた。友人には"病気平癒"と書き、娘には"大願成就"と書き記した。私は"心願成就"と最後に記している。
1000枚になり私が亡くなったら棺の中へ入れるように頼んである。
未熟な私の旅は果てしなく続く……