或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

香山草紙 エッセイ集


  4. 嫁への贈り物

春先は私の好きな季節のひとつです。森羅万象、すべての息吹が聞こえてきそうで、なんだかこちらまでうきうきしてきます。
先日、ある人に、
「貴方が書いているPHPの記事を全部切り取り、残しておいている人がいて、その人が貴方に会ったらよろしくと言っていたよ」
と、言われました。私は、『ドキッ』としました。実のところ締め切りを忘れていて、慌てて何を書いたやらわからないまま編集部に送ったり、記録として残し ていないため、同じ様なことを何回も書いているのではないかと、不安になったり、どうしても書きたいことが見つからず、ただ紙面だけを埋めたり、随分いい 加減なことをしている自分を知っているだけに、本当に恥ずかしい思いがしました。
私は文章を書くのは嫌いではありません。でも文字を書き、人前にさらすのは大嫌いです。何故かと申しますと、恐ろしいほど字が下手だからです。どのくらい 下手かと言いますと、自分で書いた文字が判らないことが度々ある――ほど下手なのです。でもその文字を人前にさらしています。ひとつは、契約していただい たお客様への礼状です。これは印刷では申し訳ありませんし、他の者が書いたのでは何の意味もありませんので、私が書いています。件数が少ないときは礼状は 少なくてすみますが、会社にとってはあまり歓迎すべきことではありません。多い時は便箋百枚以上になることも、お陰様で時々あります。有り難いことだと思 い、下手は下手なりに書いております。
もうひとつは主に営業マンにですが、毎月の契約に対する奨励金に添えて、私のコメントを書いて渡しております。ある時、社員の仲人を頼まれてご両親がご挨拶にお見えになったとき、お母さんから、
「貴方の息子に対するコメントを入社以来、すべて読ませていただき、私が持っております。これを今からは息子の嫁になる女性に渡そうと思っております」
と、言われたときにもびっくりしました。それからは、出来るだけ丁寧に、汚い言葉は避けようと思いました。他人様はどこで私のことを見ているのか判らない、平生往生だと、つくづく感じ入りました。