或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

香山草紙 エッセイ集


  38. お遍路日記VIII

標高600mの山頂近くにある第二十一番札所『舎心山太龍寺(しゃしんざんたいりゅうじ)』へはロープウェイで登れる。その発着場近くで遅めの昼食をとり、今夜の宿の手配をするが宿坊は空いておらず、室戸岬の最先端にある岬観光ホテルを予約した。
今回の遍路旅で自分自身にいくつかの決め事をしていた。
まず"宿泊の予約はその日にする"
私の性格(何をするのにも前もって決めておかないと落ち着かないと言うより腹立たしくなる)を知っている者にとっては信じられないことだが、敢えてそうした。
もう一つは"髭は剃らない"
髭も爪もそうだが、私は少し伸びると許されないタイプなのである。
今一つは"俗世間からの縁を絶つ"
少々大げさだが、友人、知人、家族、会社などには電話はしないと決めていた。
そして"会う人には全てこちらから挨拶をする"
を自分に課せていた。
第二十一番『舎心山太龍寺』は西の高野山として信仰を集めている。弘法大師が19歳の時、山岳修行をした寺で,ロープウェイから大師が100日間修行した 場所『舎心ヶ嶽(しゃしんがたけ)』を見ることが出来、そこには大師の坐像がある。境内は広々としており、樹齢数百年以上の杉木立が鬱蒼(うっそう)とし ており,霊気さえ感じる。本尊は虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)で秘仏,年1度だけ1月12日に御開帳されるそうである。四国八十八ヶ所のうち御本尊が秘 仏の場合が多く,時によれば50年に1度しか御開帳されない御本尊もある。
『太龍寺』を堪能した私は、第二十二番札所『白水山平等寺(はくすいざんびょうどうじ)』へと向かった。そこには朽ちかけた3台の木製の車が奉納されてい た。今なら丈夫な車椅子があるが、その当時足の不自由な人が遍路の為に使ったらしく、そこで行き果て奉納したと聞いた。ウミガメの産卵で有名な日和佐海岸 近くにある第二十三番『医王山薬王寺(いおうざんやくおうじ)』は、また厄落としの霊場としても知られている。33段の女厄坂、42段の男厄坂、61段の 還暦の厄坂があり、どの石段にも足が滑りそうなくらい1円玉がぎっしり敷かれている。
名前から想像すると、高級そうな岬観光ホテルは通り過ぎてしまうほど小さなホテルだった。5時頃に到着した私は、宿のおばあさんに勧められるまま入浴をし た。どうも泊り客は私以外に若い女性の二人連れだけらしい。食事までに少々時間があったので、岬まで散歩をした。室戸岬の先端から見る暮れなずむ太平洋の 海を、2年経った今でも思い出す。高知まで来たなぁと云う感慨に浸りながらも不安と期待が交錯していた。それはその夜吹いた室戸の風のように激しいもの だった。同行二人の旅はまだまだ続く……