或る二世経営者のホームページ ~香山廣紀 かく挑み、かく歩む。~

香山草紙 エッセイ集


  113.トルコ旅日記~渋滞んでイスタンブール~8月18日

8月18日

 

いよいよトルコ旅行も最終日だ。

今日は長い一日になりそうである。フライト時刻は、正確にはトルコ時間の8月19日AM0時50分。

朝食を済ませキャリーバックをドアの外に置くと、出発まで1時間以上ある。その時間を利用してホテルの近くに見えるモスクを訪ねることにした。実際に行って見ると、広大な敷地の中に立派で重厚なモスクが建っており、礼拝堂に入ってみると、中は清々しい空気が漂っている。ドームも趣があり、思わず正座をしてお祈りを奉げた。

広いお庭をゆっくり歩いていると、先生チームと出くわした。きっと彼女達も爽やかな気分に浸ったと思う。

9時30分出発。バスは古代ローマの面影を僅かに残したヴァレンス水道橋(コンスタンティヌス大帝時代に建設が始まり378年に完成した)とテオドシウスの城壁を眺めながら、レザーの専門店に着いた。お店に入るとチャイが振舞われる。三階に案内され、ミニファッションショーが始まった。モデルは女性が四人と男性が二人である。代わる代わる様々なレザーのジャケットやコートやワンピースを身に付けて、颯爽と舞台を踊るように闊歩する。15分ほど経過した頃に、ゲストとして舞台に上がれと、私とOLチームの既婚者を指名した。逡巡していたが、彼女がいち早く舞台に上がったので、私もそれに従った。楽屋に行くと、簡単な歩き方とポーズの決め方を、身振り手振りで指導される。どうみても冴えないペアだと思うが、仕方ない、『賽は投げられた』である。幕が開き、私はモデルの女性と、彼女は男性と、ステージへと引きずられるように登場した。フラッシュが眩しい。私は片手を挙げ、軽く微笑み会釈した。精一杯の演技である。

モデルに借り出された訳ではないが、子羊皮のジャケットを購入した。OLチームの家島出身の彼女が「黒が似合いますよ」と言うので黒を選んだ。インテリ?チームも女性のほうが、コートを買っていた。爽やか宝塚チームはどうやら気に入ったものがなった様子だった。

トプカプ宮殿までは15分足らずで着く。今日はさすがに日曜日なのか、いつもの渋滞ほどではない。トプカプ宮殿は、オスマン朝時代における支配者の居城として、400年も長きに亘って、政治・文化・経済の中心だった。広大な宮殿内には、教会はもとより、ハレムや宝物殿もあり、その権力の強大さを物語っている。

昼食はトルコ風中華料理である。この店は坂道の途中にあり、これを登ったあたりで、今年の六月ごろ国際世論を賑わせたデモがあったところだそうだ。

中華はまあまあ食べられた。食事が終わる頃にガキがハンデさんと何か話している。

「ハンデさん、ハンデさんの生きがいは何ですか」

「そうね、生きがいね、難しい質問ね」

「では大切にしていることって何ですか」

「それは家族ね、仲良く暮していければ幸せだわ」

「素晴らしい」と言って、拍手をする。ガキチーム、ミニミニチーム、続いてあっちゃんチームも手をたたく。私はシラケル、虫唾が走る。このガキは、名前でしか呼ばない父親と母親の前では《いい子》ぶっていて、いないときは生意気で性格の悪いガキだとしみじみ確信した。

昨日娘たちと行った巨大なグランドバザールとは比較にならないが、エジプシャンバザールに行く。そこのショールの専門店で何枚か吟味していると、隣で爽やかチームの奥さんが「何枚買っておられるの?私のもあります?」と、微笑みながら可愛く言う。

リシュテム・パシャ・モスクへは徒歩で5分とかからない。そこも沢山の観光客と信者達でごった返していた。でも礼拝堂の中は静寂で凛としており、ドームも荘厳である。

30分程待って、我々は船に乗り込み、ボスボラス海峡のクルージングを楽しんだ。新市街と旧市街を交互に見ながら、心地よい波を身体で受けながら、適当にデジカメのシャッターを押す。

下船するとバスが待っていた。今から夕食だという。まだ5時を少々回ったところだ。殆ど空腹は感じない。泣く子とガイドには勝てないので、命令に従う。海鮮料理だというが、どの種類の食べ物も口に合わない。かろうじて辛抱が出来る料理のみ押し込む。ミニミニチームの女のほうはビールを片手に(旦那の方はアルコールがダメである)、片っ端から胃袋に放り込む。あっちゃんチームの女性は、あっちゃんにこれ食べてと、かいがいしく世話をするが、どうやらあっちゃんは味が少しは分かるみたいで、あまり食が進まない様子だ。それでもインテリチームは静かに黙々と食べている。いけてない先生風チームの一人が、「今度はどちらに行かれる予定ですか?」私に尋ねる。「そうですね、ハワイにでも」とぶっきらぼうに答える。「ハワイですか、何回くらい行かれているのですか?」「まあ、20回くらいかな」「では、別荘か何か持っているんですか?」「別荘はないけど、行くとコンドミニアムを借りて、1ヶ月くらい滞在します」と、いい加減な冗談を言う。「まあ素敵」と本気にしたみたいだ。

最後の締めは、なんといってもトルコアイスだ。旅行雑誌にも取り上げられた《伸びるアイス》のパフォーマンスが始まる。全員がカメラのシャッターを切る。私もお付き合いでシャッターを押す。アイスが全員に配られる。あっさりとしてなかなか口当たりの良い味である。トルコアイスを食べながら、魚市場を見学する。爽やかチームの奥さんはどうでも食べたいものがあり、それを探す。トルコ料理の中のドルマの一種で、ムール貝にお米を詰め込んで、蒸したものである。すぐ見つかり、我々も食べてみる。炊き込みご飯のような味で日本人には合う食べ物だ。市場をもう少し見て回ると、海老やら蟹やらまた新鮮な魚介類がたくさんあった。我々はいったいこの一週間何を食べてきたのであろうと、愕然とした。あまりに情けない、トルコ最後の晩餐だった。

 

 

空港には7時過ぎに到着。フライトまで5時間以上ある。

ビジネスカウンターは空いていた。隣を見ると、あっちゃんチームがいる。小嶋さんに、

「彼らもビジネスなの?」と聞くと、「いえ、ゴールド会員で、チェックインはビジネス扱いですが、席はエコノミーです」と冷たく答える。

早速ラウンジへと向かう。そこは高級ホテル並みのラウンジである。いろいろラウンジは利用したが、イスタンブールのラウンジは桁外れに広くしかも豪華で、飲み物の種類も軽食類の品揃えも豊富で、おまけにシアタールームも完備されており、ソファーも座り心地も良くゆったりしている。ラウンジの中を散策していると、隅のほうでロープのようなもので仕切られて、ぽつねんと座っているカップルがいる。よく観るとあっちゃんチームである。

日本から持参していた本を読むのも少々飽きたので、空港内を歩くことにした。石川新婚チームが免税店でショッピングをしている。

「何か買い物ですか?」「ええ、まあ」「奥さん、この一週間見てきましたが、ご主人優しいですね」「はい」「優しいだけが取り柄ですから」と主人がフォローする。

「関空から石川県までどうやって帰るのですか?」と聞くと、送迎のジャンボバスで帰ると事だ。「多分、午前0時は過ぎると思います、明日は主人は仕事なんです。ちょっと可愛そうです。」奥様も心やさしい素敵な女性である。

石川チームと別れてブラブラしていると、フェラガモのお店に爽やかチームがいた。主人は京大を出て公認会計士をしている、秀才である。

「今ね、主人におねだりしているの、稼ぐのもお金の管理も主人なの、でもお願いするのはただですものね」人の好い市原会計士は、たくさん持っているから、と宥めている。その結末は知らないが、おそらく購入したと思われる。

それから一時間ほどラウンジで過ごし、出発ゲートに向かう。イスタンブールの空港はとてつもなく大きくて、端から端までが1キロくらいありそうである。小嶋さんに挨拶をして、飛行機に乗り込んだ。来るときは隣が空席だったので、気を使わなかったが、今度は中国人らしい婦人が席に着く。

来るときもそうだが、今回も夜の機内食を食べる前に、眠りについた。途中目が覚めてからは、映画を観たり本を読んだりして過ごした。朝食はガッチリ食べ、洗面所で歯を磨いたり、顔を洗ったりしていると、関空に着陸した。11時間のフライトが短く感じられた。飛行機のドアが開くのを待って、一番に降りた。ターンテーブルでは三番目くらいに、キャリーバックが運ばれてきた。

《はるか》と《新幹線》を乗り継いで、姫路に着いたのは午後8時前だった。

意外と元気である。トルコの旅は終わった、と実感した。